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さらりとした梅酒

梅酒の広告

 数年前、テレビコマーシャルで「さらりとした〜梅酒」のメロディが若い女性の映像とともに流れることが多かった時期があります。小生はこの商品の一つ、500ml紙パックの梅酒を入手して、表示などを見て(飲んでみて)、考えてみました。

 梅酒はもともと焼酎ですから、アルコール度は25%くらいです。「さらりとした梅酒」はアルコール度が10%と低く、ワイン並です。梅酒を作るにはかなりの量の砂糖を使います。ダイエット志向の強い若い女性に梅酒は向かないはずです。そのような若い女性消費者の潜在的な恐れを払拭させるには、「どろりとした梅酒」ではまずいのです。「どろり」を希釈したのが「さらり」なのでしょう。そして広告には若いスリムな女性たちが登場します。テレビ画面で数人が飲む場面からは、この商品が若い女性をターゲットにしていることは明らかです。スリムな女性ばかりを起用しているのは「これを飲んでも太らない」という暗黙のメッセージを伝えるためと推定されます。コマーシャルは実に緻密な戦略で作られるのです。

 表示の「原材料」には「梅、砂糖、醸造アルコール、ブランデー」と書いてあるだけで、砂糖の濃度やカロリーの表示はありません。メーカーに問い合わせたところ、糖類80g含有、620キロカロリーとの回答でした。コーヒーなどに入れるスティック状の砂糖は2〜4〜6gですから、4gのスティックなら20本、カロリーだとご飯なら茶碗4杯に相当します。紙パックの半分を飲んだとすると、アルコール量は日本酒2合弱(156ml)、カロリーにして小さめのシュークリーム4ヶに相当します。

 アルコール度の低い甘い酒は、口当たりがいいので飲みやすいものです。清涼飲料水にはかなりの糖分が含まれていて、ペットボトル症候群という一種の飲み過ぎにが問題になりました。これは飲んで、血糖が上昇し、浸透圧利尿という現象が起き、ますますのどが乾いて、また清涼飲料水を飲むという悪循環に陥った状態を言います。アルコール飲料には他の清涼飲料水にはない危険性があります。これは梅酒に限らず、口当たりのいいリキュール類に共通する特徴というか危険性ですが、つい飲み過ぎることに加え、アルコールに耐性が生じて、飲む量が増えてしまう可能性があります。また飲み続けると当然、体重が増え、それが梅酒(リキュール類)のせいだと気づかないでいると、若い女性は食事の量を減らそうとします。しかも酔いがなかなか満足に得られなくなり、もっと飲む量が増えていきます。もちろん一部の人々ですが、結局、アルコール度の高い、酔いがもっと深く得られる酒類、たとえば焼酎などに移行していきます。

 私は梅酒が若い女性に広がることはいくつかの問題があると思います。太ること、摂食障害(拒食・過食)を起こしやすいこと、飲み過ぎやすいこと、焼酎に移行しやすいことなどです。若い女性をターゲットにして、多くの酒類メーカーがしのぎを削って商品開発と宣伝をしている中で、私がここに書いたような小さなつぶやきは、根拠が薄い言いがかりにしか聞こえないでしょう。しかし私は20歳前後の女性が、太りたくない一心で、食べて吐いて、そして梅酒を飲む、そのような女性を外来で診療したことがあります。またアルコール依存症が30歳代、20歳代の女性にも広がっていることも感じています。そんなことは個人の自己責任だから放っておけという考えにはなれません。アルコール依存症は個人の心理的問題が原因になると共に、飲酒に寛容で無防備な社会が作るという面もあるのです。そして悲惨な状況はいつ身内に起こってもおかしくないほど、広がっているのです。(2002年10月に書いたものを一部、修正して宮千代加藤内科医院のHPから移しました。)

  

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